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2016年11月15日

るように育てられるか


 ベルガラスは髭をかいた。「あそこのチェレク人どもをほっておいたら、やつらはわしらをつけてくるだろう。うしろからつけられるのは気がすすまん――とりわけ、いったん暗くなったらな」しわだらけの顔がぴんとはって、狼じみたにやにや笑いがうかんだ。「よし、やろうじゃないか」
「でも二、三人は残しておいてよ、おとうさん。知りたいことがいくつかあるの。みんなも怪我をしないようにしてね。きょうはちょっとくたびれたから、治療はしてあげられないわよ」
「そんなことにはなりませんよ、レディ?ポルガラ」ブリンが快活に約束した。「葬式ならいくつかあるかもしれないけど、治療はありません」
 ポルガラは空をあおいでためいきをついた。「アローン人はこれですもの」
 不意打ちは、身を潜めている熊神教の信者たちが予期していたのとはまったくちがう展開になった。わめき声をあげてガリオンにとびかかった毛皮をきたチェレク人は、リヴァの王の燃える剣に空中で切りつけられ、大きな刃で胴体からほぼまっぷたつにされた。男は血でぐしょぬれの草むらに落下して、身もだえしながらかぼそい声をたてた。カイルが突っ込んできた信者の頭を平然とたたきわれば、ふたりの兄弟たちはおどろいている襲撃者たちの上にとびおりて、残忍に、だが規則正しく、かれらを切り刻んだ。
 ひとりの信者が大きな岩の上にとびのって、弓矢で直接ガリオンに狙いをつけたが、ベルガラスが左手で短いジェスチャーをすると、射手は突然長い優雅な弧をえがいて後方へ投げ飛ばされ、近くの崖の外へ投げ出された。男は威力を失った弓矢を宙になげだして、絶叫しながら、五百フィート下で泡だつ荒波のほうへ落ちていった。
「忘れないでよ、二、三人は生け捕りにしてちょうだいと言ったはずよ!」殺戮がひどくエスカレートしはじめたとき、ポルガラはあわててかれらに念をおした。
 カイルはそれにたいしてうなるような返事をし、死にものぐるいで突進してきたチェレク人をあざやかに避けた。大きな左のげんこつがチェレク人の側頭部にはでにふりおろされ、男は芝の上に昏倒した。
 ダーニクはお気に入りの武器、長さ三フィートほどの頑丈な棍棒を使っていた。あざやかな手さばきで信者の剣をはたきおとし、頭をしたたかに殴りつけた。男は生気のうせた目つきで、くたっと地面にくずおれた。ベルガラスは戦いのようすをひとわたりながめてから、はむかってきそうな敵を選んで五十フィート空中にもちあげた。宙づりになった男ははじめ、自分の置かれた新たな位置に気づかないらしく、空にむかって無益に剣をふりまわしつづけた。
 戦いはまもなく終わった。夕日が投げる最後の深紅の光線が、崖っぷち近くの血ぞめの草むらにまじりあい、地面にはこわれた剣やら、血まみれの熊の毛皮のきれはしやらがちらばっていた。「なんだか、すっきりしたよ」ガリオンは倒れている信者のひとりの死体で剣についた血をぬぐいながら言った。気がつくと、〈珠〉もまた満足げに輝いていた。


 ポルガラは気絶しているふたりの生存者をひややかに調べていた。「ふたりともしばらくは目をさましそうにないわ」まぶたをめくって、その下のどんよりした目を観察しながら言った。「その男をおろしてみて、おとうさん」ポルガラはベルガラスがさきほど宙づりにした男を指さした。「できるなら、五体満足のままでね。その男に聞きたいことがあるのよ」
「いいとも、ポル」老人の目がきらめいていた。口が裂けそうなにたにた笑いがうかんだ。
「おとうさん、いつになったらおとなになるの?」
「なんだ、ポルガラ、失敬なことを言うな」かれはふざけたように言った。
 宙に浮いていた信者はようやく自分の状況に気づいて、剣を落としていた。からっぽの宙にふるえながら立ち、恐怖に目を飛びださんばかりにして、手足をはげしくけいれんさせている。ベルガラスがそっと地面におろしてやると、とたんにへなへなと倒れこんだ。老人は男の毛皮のチュニックの前をむんずとつかんで、手荒にひきずりおこした。「わしがだれか知っているか?」ベルガラスはすくみあがっている捕虜の前に顔をつきだして詰問した。
「あんたは――おれは――」
「知ってるか?」ベルガラスの声がむちのようにしなった。
「はい」男は声をつまらせた。
「それなら、わかるだろう、逃げだそうとしたら、また宙づりにしてそのままおきざりにしてやるぞ。わしにそういうことができるのを知っておろう、え?」
「はい」
「その必要はないわよ、おとうさん」ポルガラが冷たく言った。「この男はとても協力的だわ」
「おれはしゃべらないぞ、魔法使いめ」捕虜はきっぱり言ったが、その目はまだおどおどしていた。
「そんなことないわ」ポルガラはひややかな笑いをうかべた。「なにもかもしゃべるわよ。わたしが要求すれば、何週間でもしゃべるわ」ポルガラは男を凝視したまま、左手で男の顔の前で小さなジェスチャーをした。「よくごらん。細大もらさず楽しむといいわ」
 ひげ面の熊神教の信者は目の前の空間を見つめた。男の顔から血の気がひいた。恐怖に目が大きく見開かれ、金切り声をあげてあとずさった。ポルガラは伸ばしたままの左手で、容赦なくひっぱるような仕草をした。男の足がたちまち釘づけになったように動かなくなった。「逃げられないのよ。しゃべらなければ――いますぐ――おまえが死ぬ日までそれが顔の前に立ちつづけるわ」
「あっちへやってくれ!」男は狂ったように懇願した。「たのむ、なんでもする――どんなことでも!」
「どこでこれをおぼえたのか不思議なんだよ」ベルガラスがガリオンにささやいた。「わしにはやれたためしがないんだ――やってはみたんだがね」
「いまなら知っていることを全部あなたに話すわよ、ガリオン」ポルガラがそのとき言った。「しゃべらないとどうなるかわかったようだから」
「ぼくの息子になにをした?」ガリオンはふるえあがっている男を問いつめた。
 捕虜はごくりと唾をのんでから、挑むように背すじをのばした。「かれはいまあんたの手の届かないところにいるよ、リヴァの王」
 ふたたび怒りがふくれあがり、ガリオンはとっさに剣をぬこうと肩ごしに手をのばした。
「ガリオン!」ポルガラが鋭く制した。
 信者はたじろいだ。顔が青ざめた。「息子は生きてる」あわてて言った。次に満足そうな表情がつかのまうかんだ。「しかし、今度あんたが息子に会うとき、息子はあんたを殺すだろう」
「なんの話だ?」
「ウルフガーは神託を調べたんだ。あんたはわれわれが何世紀ものあいだ待ちわびていたリヴァの王じゃない。アロリアを統合し、われわれを率いて南の諸王国と戦うのは、次のリヴァの王なんだ。つまりあんたの息子さ、ベルガリオン。かれはわれわれを導く。われわれの信仰を信じらさ」
「息子はどこだ?」ガリオンはどなった。
「あんたにはけっして見つけられないところだよ」捕虜はあざけった。「われわれがかれを育て、真の信仰でかれを養育するのだ、アローンの君主にふさわしくな。そして成長したかれは、あんたを殺しにきて、かれのものである王冠と剣と〈珠〉をあんたの手から取り戻すだろう」宗教的恍惚感にひたって、男の目はとびだし、四肢はおののき、口の端にはつばが泡のようにたまっていた。「あんたはみずからの息子の手にかかって死ぬのだ、リヴァのベルガリオン」男は甲高い声をたてた。「そしてゲラン王は全アローン人を導いて、ベラー神の命令どおり、南の不信心なやからと戦うのだ」
「尋問の線からあまりはずれんほうがいいぞ」ベルガラスが言った。「しばらくわしに質問させてくれ」かれは目を血走らせた捕虜のほうを向いた。「おまえはそのウルフガーについてどのていど知っているのだ?」
「ウルフガーは熊神で、あんたよりもっと力があるんだぞ、じじい」
「そいつはおもしろい」ベルガラスはつぶやいた。「おまえはこれまでその魔術師に会ったことがあるのか――あるいは見たことがあるのか?」
「それは――」捕虜はためらった。

Posted by こで止まることにし at 13:04│Comments(0)
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